がん免疫療法とは

はじめに

癌は全身病と言われています。

早期には、からだの一部分に限定している局所の癌病巣は、次第に全身に拡がって(転移)、全身的な病気になります。

主な癌の治療法のうち、外科療法と放射線療法は局所的な癌の治療にはとても強力です。しかしながら、手術では全身に散らばっている癌細胞一つひとつを取り除くことはできませんし、放射線を全身に照射することは、副作用が強すぎるため不可能です。

全身病を治すということからすると、化学療法や免疫療法は全身くまなく治療できる点では、とても適した治療法と考えることができます。癌に対して局所療法と全身療法それぞれの長所を生かし、組み合わせることで、進行癌も治療できるようになってきました。

癌治療には総合的な取組みが必要です

がん治療の種類

免疫細胞療法
全身療法
免疫細胞療法には、特異的免疫細胞療法と非特異的免疫細胞療法があります。特異的免疫細胞療法として樹状細胞療法、非特異的免疫細胞療法として活性化リンパ球(LAK)療法があります。副作用のほとんどない癌治療法として期待されていますが、経費と人手がかかることが問題となっています。
手術
局所療法
手術は、癌の病巣を直接身体から取り除くことができます。主に初期の癌に有効で、進行した癌では、転移癌や微小な癌が残っている可能性があり、完全に取りのぞくことは困難です。また、正常な部分(臓器)も一部とらなければならないこともあるので、それによる合併症がおきたり、生活の不自由が残ることがあります。
化学療法(抗癌剤)全身療法 化学療法は、化学物質(抗癌剤)を用いて癌細胞の分裂を抑え、癌細胞を破壊する治療法です。抗癌剤には、癌細胞を死滅させるとともに、正常な細胞も傷害させてしまうという作用があります。理想的な抗癌剤は癌細胞だけに作用して、正常な組織には作用しないという薬ですが、残念ながらそのような薬は現在のところ存在しません。
放射線・粒子線
局所療法
放射線・粒子線は手術と同じく、癌とその周辺のみを治療する局所治療です。手術と異なるところは、臓器を摘出する必要がないので、治療前と同じような生活をすることが可能な治療手段であることです。近年、これらの技術は急速に進歩し、癌組織だけを照射し、周囲の正常組織にはできるだけ照射しないようにすることが可能になってきました。
ホルモン療法
全身療法
ある種の癌では、癌細胞の発育にホルモンを必要とします。そのホルモンと反対の作用をするホルモンを投与して、癌細胞の発育を阻止する治療法です。治療の対象となる主な癌は、乳癌、子宮体部癌、前立腺癌、甲状腺癌、腎癌などです。
分子標的医薬
全身療法
従来の抗癌剤の開発は、いかに癌細胞を殺傷するかに重点が置かれて開発されてきたため、癌細胞と正常細胞を区別する力が乏しく、結果として多くの副作用が生じていました。しかし、近年の分子生物学の進歩により、癌細胞だけが持つ特徴を分子レベルでとらえられるようになりました。それを標的とした薬が、分子標的医薬です。
BRM療法
全身療法
BRM療法は免疫系をはじめとして、身体全体の働きを調節することにより、治療効果を得ようとする治療です。つまり、癌を治そうとする患者さん自身のもつ力を手助けし、強めるものです。この治療法は単独で行われるよりも、むしろ免疫能が低下してしまう手術や放射線、化学療法などと併用することで、その治療効果を期待します。
その他
  • 血管新生抑制作用のある薬剤
    セレブレックス、サリドマイド等
  • 温熱療法
    温熱療法は、癌細胞が正常細胞と比べ熱に 弱いという性質を利用した癌の治療法です。
  • 食事・サプリメント

免疫細胞療法とは

癌と免疫について

人間には生まれつき免疫とよばれる働きが備わっており、体の中に侵入した細菌やウイルスを、体の中から取り除く働きがあります。

予防注射もこの原理を応用したもので、例えば「はしか」の予防注射を行って免疫をつけると「はしか」のウイルスは体の中に入ってこられなくなります(排除されます)。

体の免疫は、癌ができたり、転移したりすることとも、密接な関係があります。体の免疫力が低下した状態、例えば後天性の免疫不全症候群(エイズ)や薬によって生じる免疫の抑制された体の状態では、癌ができやすくなることが知られています。

癌は通常、手術や抗癌剤、放射線で取り除こうとするのが一般的ですが、近年はこれとは別に、人間の体に生まれつき備わっている免疫の力を利用したり、免疫の力を強めたりすることで癌の発症や進展を抑えようとすることが試みられています。これが免疫療法と呼ばれているものです。

免疫療法には特異的免疫療法と非特異的免疫療法というものがあります

特異的免疫療法: 患者様の癌を狙い撃ちすることができる、
攻撃力の高い免疫反応が期待できます。
微小な癌に対して治療効果が期待できます。
樹状細胞療法など
非特異的免疫療法: 攻撃力は高くはないが、免疫力を全体的に高めることが出来ます。
微小な癌に対して治療効果が期待できます。
活性化リンパ球療法、
BRM療法など

免疫細胞療法の臨床的な効果は?

樹状細胞療法

【癌をつぶす】【癌の進行を止める】【術後の再発予防】【QOLの維持】

世界中で臨床研究がなされており、臨床的な有用性が得られるという報告も多数出ています。臨床研究では多くの種類の癌を対象として行われており、 治療選択肢がなくなった多くの癌患者様を対象にこの療法が行われています。

例)悪性黒色腫(約20%〜約40%)、 腎細胞癌(約10%〜約40%)、
  卵巣癌(約10%〜約45%)、 前立腺癌(約20%〜約30%)、
  甲状腺癌(約14%〜約60%)、大腸癌(約14%〜約16%)、
  胃癌(約22%〜約25%)、 乳癌(約17%〜約50%)
  ※ ( )内は、これまでの論文を参考に癌の退縮または進行を止める効果の割合を示しています。

  • 樹状細胞療法をご希望の方で手術前の患者様は、主治医の先生に十分な量の癌組織を保管してもらうようにお伝えください。
  • 樹状細胞療法をお考えの患者様は、抗癌剤治療を開始する前に成分採血を行うことをお勧めします。これは抗癌剤により、骨髄において免疫細胞をはじめとする血液細胞を  作り出す能力が低下するためです。

活性化リンパ球療法

【術後の再発予防】【癌の進行を止める】【QOLの維持】

この療法は約20年前より開始されましたが、皮膚癌、腎臓癌の再発に対して約20%から30%程度の癌の進行が止まるという効果が得られています。また国立癌センターの臨床研究では、原発性肝臓癌の手術後に再発予防として本療法を使用したところ、効果が得られたという報告がされています。ほかには癌性胸膜炎、癌性腹膜炎による胸水、腹水に対して効果があり、一次的に胸水あるいは腹水を減量、消失させることができます。

劇的に効果のある治療法ではありませんが、癌の再発予防、あるいは癌の進行を止めることを目的として、外来通院で日常生活を犠牲にすることなく受けることができる治療(QOLの維持)といえます。

  • LAK療法は、癌が比較的小さい場合、特に手術後の再発予防によい適応と考えられます。手術前に治療計画をお立てになることをお勧めします。

セレンクリニックの免疫細胞療法選択基準

治療法 免疫反応 癌組織 適合検査 適応部位 特徴
自己癌組織
樹状細胞療法
特異的 必要
  • 自分の癌を狙い撃ちすることができる強い免疫反応が期待できる
  • 自分の癌組織が必要
局所
樹状細胞療法
特異的 体の表面にある癌
頭頚部癌
乳癌他
  • 自分の癌を狙い撃ちすることができる強い免疫反応が期待できる
  • 癌が体表面にあり、ある程度の大きさがあることが条件
人工抗原
樹状細胞療法
特異的 必要
  • 自分の癌の一部分ではあるが、そこを狙い撃ちできる強い免疫反応が期待できる
  • 治療を受ける前に、適合検査が必要
活性化
リンパ球療法
非特異的
  • 微小な癌に対してよい適応と考えられ、術後の再発予防を目的とした使用に効果
  • 誰でも受けることができる 
  • 簡単な免疫療法