意図的な「想定外」
意図的な「想定外」と、20世紀資本主義社会における「7つの大罪」
今の日本の政治は、一体何をやっているのでしょうか。未曾有の大震災、そして世界最悪の原発事故が現在進行形であるにも関わらず、羅針盤としての役割を担うべき政治家達が、自らの利権を獲得するためだけに動いているように見えるのは私だけでしょうか。特に、原発事故への対応を一歩間違えば、さらに多くの日本のさまざまな力が失われる事態になり得る状況であることは、震災から3カ月経過した現在もなんら変わりありません。日本国は存亡の危機に立たされていると言っても過言ではない、この客観的事実を今の政治家達はどこまで理解できているのでしょうか。それとも、あまりの想定外の事象に直面してしまったがために疲労困憊し、感覚が麻痺してしまったのでしょうか?
幸か不幸か、人間には「適応能力」が備わっています。歴史的にみると、ペストや結核、インフルエンザなど、これまでどんなにひどい感染症が流行しても、人類は必ず生き残ってきました。免疫の観点では、どのような感染症に対しても、免疫を獲得できた人が常に存在していたからです。また、日本は島国として台風や地震、噴火など、昔から多くの自然災害に見舞われてきました。それでも、我々の祖先は立ち上がってきました。
ただし、このような適応能力では対処できない事象が存在します。第2次世界大戦における広島・長崎の原爆投下後はどうだったでしょうか。爆心地から500メートル以内での被爆者は98から99パーセントが死亡し、500メートルから1キロメートル以内での被爆者では、約90パーセントが死亡したことが報告されています。放射能とは、そういう人間の適応能力を遥かに上回ってしまう有害性があるものだということです。放射線は、がん治療において現在用いられていますが、がん細胞と正常細胞の放射線に対する適応能力(感受性)には実はほとんど差はありません。放射線は、その細胞ががん細胞だろうか正常細胞だろうが区別なく、分裂が盛んな細胞の遺伝子(DNA)に対して同じように作用します。たとえきちんと制御されたがん治療における放射線治療後であっても、患者様の免疫力は確実に低下します。私達のクリニックでは、詳細な「総合免疫機能検査」により免疫力を客観的に評価して治療方針を構築していきますのでこのようなデータを把握しているのですが、免疫細胞は放射線障害に弱いのです。さらに今回の原発事故後の放射能被曝は、単なる「外部被曝」だけでなく、いまだ拡散し続けている放射性物質による「長期的な内部被曝」の影響が今後問題になります。特に、赤ちゃんや小児期においては、成長のための細胞分裂が盛んな時期ですから、放射線障害の影響は大変受けやすい状況にあります。このような未曾有の長期に及ぶ外部+内部被曝に対して、はたして人類にはどのくらいの適応能力が備わっているのでしょうか?専門家が何と言おうと、この原発事故後の経過を的確に想定するためのデータがない以上、必ず想定外はあるのです。それが、我々が今回の大震災・原発事故から学ぶべき教訓ではないでしょうか。
原発問題には、意図的に「想定外」を作ってきた歴史が存在します。20世紀の資本主義社会において「原発を推進すること」が最大の目的になってしまい、「原子力発電所からは放射能は絶対に漏れない」ことを意図的に盲信して原子力発電所の安全対策は計画されてきた歴史が、2011年5月23日の参議院行政監視委員会にて報告されています。
2011年5月23日参議院行政監視委員会
今後も「想定外」を意図的に「想定」しないのなら、ドイツのように日本も原発は全廃すべきでしょう。もう一度、原発事故を起こしてしまったら日本は滅ぶ・・・これは決して想定外の事象ではありません。すでに日本の一部は失われてしまったのです。人類の適応能力を超えてしまったとしたら、その先には何が想定されるでしょうか?想定したくない事象を、やっぱり「想定外でした」などと言い逃れをするような時間的猶予は我々には残されていないはずです。
最後に、先ほどの参議院委員会において、発表された小出裕章先生(京都大学原子炉実験所助教授)が、最後にマハトマ・ガンジーの言葉を引用されましたので、改めてここで御紹介させて頂きます。私達は、これから何のために「原発問題」を考えていくのか。人類の存在自体が永遠でなくなったとき、私達はその時には「想定外でした」とすら言えなくなっているのです。
20世紀資本主義における「七つの社会的罪 (Seven Social Sins)」:
1.理念なき政治 Politics without Principles
2.労働なき富 Wealth without Work
3.良心なき快楽 Pleasure without Conscience
4.人格なき学識 Knowledge without Character
5.道徳なき商業 Commerce without Morality
6.人間性なき科学 Science without Humanity
7.献身なき信仰 Worship without Sacrifice


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